1.はじめに
当社は床コンクリートの施工会社であり、日々、新設・改修ともに数多くの工事を手掛けている。本稿では、それらの経験から得た知見に基づき当社で開発した、主として大面積の床施工に関する新たな施工技術、無人コンクリート均しロボット「リバイブロボ」および、素地仕上可能なレベリング材、雨打たれ補修材について紹介する。
2.無人コンクリート均しロボットで変わるひび割れ抑制対策と締固めの本質
当社は2021年6月に無人コンクリート均しロボット「リバイブロボ」(写真1)を開発、リリースした。リバイブロボはボタン一つでコンクリート締固めとトンボ均しが行える均し機械で、その導入により、特に大面積コンクリート施工において締固め作業とトンボ均しを無人にて行うことが可能となった。
当社ではかねてより、コンクリート工事において最も重要工程と言われる「締固め」作業を定量的かつ効率的に行い、ひび割れ(写真2)や剥がれなどの抑制、コンクリート中の気泡や空隙(写真3)を除去すると同時に、これまで熟練工が行ってきた「トンボ均し」工程を同一の再現性をもって機械的にならせる装置が、床面全体のレベル精度や耐久性能の品質的観点から重要だと考えていた。それらを実現するものとして開発されたのが、リバイブロボである。
従来工法では、熟練工の良し悪しで建物全体の床面のレベル精度や締固め工程にバラつきがある。小面積の床施工であれば熟練工の手作業は優れているが、物流施設など数万㎡単位の面積の施工であれば、全体面積の品質を安定および向上させるためには機械的かつ定量的な施工が望ましい。
【締固めの効果と従来型のタンパーとの違い】
従来型タンパー(写真4)の課題として挙げられるのが、ボード全体の振動数値にバラつきがあることだ。これは振動が起こり始めてからボード内にレベリング流動が起きた時の表面の材料配置にも影響があり、レベルの平坦性を確保するという観点から、タンピングボード全体の振動数値を同一にする必要があった。
リバイブロボは、従来行われてきたエンジン式タンパーに比べ約3倍の締固め加速度にて作業を行えるだけでなく、タンピングボード全体の振動数値を同一にすることで、振動によるレベリング流動によって表面に行き渡る材料配置が均一になり、平坦性を構築することが可能となった(写真5)。これにより例えばボードの左右端部で床面に3㎜~4㎜のレベル誤差があった場所でも、リバイブロボが振動すると同一の振動によって表面張力の作用でレベル誤差が改善されることから、フレッシュコンクリートを均す際の「締固め」および「均し」の重要工程がさらにグレードアップされる。
また環境対策として、リバイブロボは世界初となるリチウムイオンバッテリー搭載による電池式タンパーであり、これまで世界中に存在するエンジン式タンパーに先駆けてコンクリート均しをEV化することで排気ガスをゼロにし、これから訪れる脱炭素社会に向けた建設業の低炭素化や脱炭素化の取り組みに貢献する。
また排気ガスのゼロ化は、冷凍冷蔵倉庫などの閉め切った場所のコンクリート打設や、一酸化炭素中毒のリスクのある場所における安全対策としても有効なことから、現在あらゆる用途において施工依頼、施工計画の検討に挙げられている。
3.施工者の視点で開発した3種の床レベリング材
次に床改修工事や既存コンクリートの補修工事に関し、雨打たれ補修や素地仕上げ可能な材料について、新たに開発した3製品(FAカチオンフィニッシュ、FAカチオンハード、FAパワーレベラー)の特徴を紹介する。これらは施工店の視点からユーザーニーズに応えるべく作り上げ、生まれたものである。
【薄塗り可能な高強度レベリング材】
これまで高強度セルフレベリング材といえば厚みを5㎜~10㎜以上確保する必要があったが、場所によっては段差や勾配等が生じる懸念から厚みが確保できないケースも多くあった。このほど開発したFAカチオンハード(写真6)は、新設や既設において厚さ1.4㎜の薄塗り且つレベリング性能を有する高強度床レベリング仕上げ材であり、これまで薄塗り補修が困難であった駐車場や、フォークリフト走行床、AGV(自動搬送車)の走行通路など耐荷重性の必要な場所での薄塗り補修が可能(写真7)となった。レベル精度の求められる場所で1㎜~2㎜のレベル誤差補修も行えることから、駐車場や工場、倉庫、商業施設など多様な用途に使用可能である。
【色合わせ補修仕上げ材】
従来の補修材は素地コンクリートに使用する場合、既存のコンクリートとの色違いにより美観を損ねることがユーザーから懸念されてきた。補修材は本来、下地調整や仕上げの下地に採用されることから色や美観に対しては重要視されてこなかった。
FAカチオンフィニッシュ(写真8)、FAカチオンハード(写真6)、FAパワーレベラー(写真9)はコンクリート色を最も再現した調色を行い、素地コンクリートの補修を兼ねた仕上げ材として開発されたため、補修後も経時により既存コンクリートに馴染む色合いになっている。本来色合わせは、補修当日または補修後数日経過した時点で行うのではなく、数ヶ月~半年ほど経過しこれ以上色落ちしない状態で判断しなければならない。その時点で色が調和したかが重要である。これらの製品は引渡し前に補修した時点では色違いが生じるが、数ヶ月すると既存床と同色に近づく(写真11)ので、個人の見解にもよるが違和感のない補修が可能なのである。
【雨打たれ補修や外でも使用可能な素地仕上げ材】
屋外の駐車場や外構コンクリート床、スラブコンクリートなどの雨に打たれたコンクリート床(写真12)を直す場合、大きく分けて二つの方法で直す。一つは研磨(写真13)のみで脆弱部を取り除き平坦度を確保して完了させる方法、もう一つは研磨で脆弱部を取り除き、研磨のみでは不可能な凹凸部を補修仕上げする方法(写真14)である。雨打たれの状態により施工法が検討されるが、歩行用ではなく、車両などが通行する場所などで雨打たれ補修を行う場合、脆弱部の除去による下地づくり、強度や耐荷重対応の材料選定が不可欠であり、下地と仕上げ材の役割を担う材料が必要となる。そうしたニーズから、今回FAカチオンフィニッシュ、FAカチオンハードが誕生した。下地調整材と素地仕上げ材を一体とし、高耐久且つ仕上げ材としての役割も担うため、施工合理化、工期のさらなる短縮が図れ、機能面、施工面でもこれから大きな役割を担うと期待している。
またFAカチオンハードは、従来不向きであった屋外のレベリング材による補修を可能にしている(写真15)。屋外では日当たりや風の影響で施工リスクが高まるため補修材選定は困難であった。その点、FAカチオンハードはレベリングを利用したコテ塗りタイプとしているため、薄塗りでレベリングしながらコテで塗り広げる仕上げが可能なことと、速乾タイプであるため、風波が起こらない工夫が施されている。日当たりの強い屋外などは仕上げ後の養生を行う必要はあるが使用可能である。現在屋外駐車場(写真16)や外構コンクリートの雨打たれ補修などで採用されている。
4.おわりに
以上、床コンクリート施工者の視点からユーザーニーズを形にした工法・材料を紹介した。これまでありそうでなかった材料や、先駆的工法の発信となったが、現場から生まれる課題や難点からこそ、真に役立つ開発や工法は生まれると確信している。
当社では今後も積極的に、現場に即した工法・材料の提案を行っていきたい。