1.はじめに
昨今の技能工や施工管理者不足による工事の遅れや価格の高騰、インボイス制度の導入、さらには時間外労働の上限規制、いわゆる2024年問題などの課題が山積するなか、建設業の中でもさらに技能工の不足が深刻化している。本稿では、土間仕上げおよび左官仕上げを担う業者として、未来の施工のあり方と品質アップ、作業負担の軽減など、当社の取り組み(写真1)について述べる。現場の課題解決について少しでも参考になれば幸いである。
2.レーザースクリードは世界のスタンダード
昨今の大型物流施設やショッピングモール、ビルなど大面積コンクリート床仕上げを行う際にこれまで行われていた技能工によるトンボ均し(写真2)や定規擦りを使用したコンクリート均しは、小面積施工では品質は良好と言えるが、今後の深刻な職人不足を踏まえると地方を含めた大型物件では、工期の遅れや品質の低下を招きかねない。
そこで当社では、「誰がどこでコンクリートを均しても床レベルの精度向上や締め固めによるひび割れ抑制を行える工法」としてミニスクリード(写真3)やマスタースクリード(写真4、以下レーザースクリード)、リバイブロボ(写真5)といった施工を導入し、本書でも幾度となく取り上げてきた。特にレーザースクリードは昨今世界の土間コンクリート均しのスタンダードとなっており、大面積施工においてはほとんどの国と地域でこのような機械化施工が採用されているが、日本では一部の物流倉庫等を除きほとんど普及していない。
3.なぜ日本において機械化による施工が遅れているのか?
それには二つの理由があると考える。一つは前例にない施工法は現場で採用されにくく(写真6)、導入事例が少ない場合、定番化されている在来工法が採用される。
二つ目に単価である。職人の手作業による単価と機械化施工では前者の施工が安価である。ただし機械化施工はレベルの再現性が高く正確に均せるだけでなく、ひび割れを抑制するための初期振動と再振動の締め固めを行うなど手作業よりも複数工程が増えている。また単価が上がる理由としては機械の運搬費やメンテナンスコスト(写真7)が掛かり在来工法に比べ若干高くなる傾向にあり、それが機械化施工が進まない要因と考えられる。
しかし今後はさらに職人の増員が難しい状況が続くと考えられ、品質を上げるための精度要求は職人に頼るのではなく、機械化に投資することが現実的に望ましく、加えて時間外労働の規制もあることから機械化にシフトし、品質アップと省力化を図ることが今後の建設業に求められていると当社は考える。
4.職人の働き方を見直す必要性
これからの職人業は硬いコンクリートを均す重労働や機械および材料の移動、荷揚げ作業などの負担を取り除き、よりクリエイティブな施工に専念することができる職場環境をつくるべきであり、それこそ職人本来の働き方であろう。また我が国の働き方改革においても本来は生産性を上げることで利益を上げ、時短作業が確立し、賃金にも反映されるはずである。その根本である生産性が上がらないまま、時間外労働の上限規制や賃金上昇だけが先行していくだけでは職人会社の存続は困難であると考える。
5.機械化施工の重要機材
当社で推奨する人不足の解消とさらなる品質アップを担う機械化施工はどのような機械から成るのか紹介する。まずミニスクリード(写真8)と再振動電動タンパー(写真9)、騎乗式トロウェル(写真10)である。これらは作業負担を大幅に軽減するだけでなくひび割れ抑制や耐久性能を向上させる上で欠かせない重要機械である。従来はこれら均し作業から仕上げ作業に至るまでトロウェル以外の機械はなく、ほとんどが手作業であった。100~200㎡ほどであればまだ手作業も考えられるが大型倉庫やビルなどでは1打設で1000㎡以上は普通に行われる。土間業を営む当社では以前から腰痛に悩まされる職人が多く、作業負担の軽減を図ることが課題とされてきた。
それが昨今では大型現場を行う際に機械化施工することで多くの職人が作業負担の軽減を実感している。ミニスクリードに至っては技能工の作業の中でも一番難しいとされるトンボ均しはもちろん、自動掻き機、タンピング機能、締固め、コンクリート自動カッパギ機能が付いているため、大幅な負担軽減を実現した。
このように人員の省力化を図るだけに留まらず更に品質向上も実現することが、機械を選ぶ際の重要事項である。
6.まとめ
建設業界は今、職人不足、安全性、働き方、未来の職人の担い手問題など、課題が山積している状況であるが、今こそ土間コンクリート仕上げ業の我々が自ら変革し、機械化施工がもたらす品質向上および省力化について元請やお施主様に啓蒙し理解を得ていく必要がある。さらにこれからの土間コンクリート施工の担い手の離職や未来の土間仕上げ業のためにも行動を起こさなければならないと考える。