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1.はじめに
この4月より、建設業においても時間外労働の上限規制が適用される。特に土間工の残業問題は深刻で、関東圏では11月から3月末ごろにかけての低温期にコンクリートやモルタルの乾き待ちによる待機時間が大幅に増え、月あたり80時間から100時間を超える残業が発生する現場もある。(写真1)

ビルやマンションではレベラー(セルフレベリング材)などが盛んに採用され(写真2)、下地調整材として従来のモルタルの金鏝仕上げが不要になるため、冬場の残業時間の短縮が改善されているが、打設終了時間が午後16時~17時までと計画される現場も多いことから、表面のコテ押さえが1回程度の床スラブでは20時前後、打設が遅れると22時前後までの残業が発生している。

一方倉庫や工場、駐車場などの素地仕上げや塗装の下地となる床仕上げでは打設終了時間は1打設800~1000㎡あたりの面積で13時~15時前後、打設はビルやマンションに比べ早く終了するものの、コテ押さえによる表面の乾き待ちがスラブに比べ長くなり、仕上げ終了時間が22時~24時前後と長くなり、同現場で連続打設を続ける場合、職人の残業時間は80時間を容易に超えているのが現状である。(写真3)

2.高耐久レベラーによる素地仕上げの提案
そこで一つの改善案としてコンクリート床の素地仕上げにおいても高耐久レベラー(写真4)の検討が考えられる。

レベラーは元々下地調整材として使用されるのが一般的であったが、昨今では素地仕上げとして使用される現場も増加し、表面強度においても50N以上発現する高耐久レベラー(写真5)も開発されていることから一般の素地仕上げにおいても採用が進んでいる。
これらは元々床のレベル精度をより向上するための観点から採用されていたが、摩耗性や衝撃性もコンクリートに比べ強固であり、レベル精度や堅牢性も向上されることから利点が多い。さらに下地との接着性もJISの引張強さ試験の品質基準0.7N以上を容易に上回る接着性が認められていることもあり、上記コテ押さえによる労働時間の短縮が迫られる昨今では、高耐久レベラーの採用にも注目が集まりつつある。
ただ懸念としては、躯体としてのかぶり厚を確保するためのコンクリートの厚みにレベラーによる仕上げ材を含めるのは難しく、あくまで躯体のコンクリートとしてのかぶり厚は確保しつつ、躯体の厚みとは別で仕上げ材として採用することが前提であるため、最低5㎜~最大20㎜程度の厚み分が材料費として発生する。

3.残業問題の解決、品質の向上のために
そうした点も含め、素地仕上げを高耐久レベラーによる施工(写真6)で完成させることを一つの選択肢として提案したい。今後の床施工業界の働き方を変えるきっかけとなり、残業問題を解決するだけでなく、これまで施工の課題とされてきたレベル精度、耐久性能、美観の向上、ひび割れや不陸の抑制にもつながることから、今後の施工計画の一案として検討されることを推奨する。
