1.はじめに
昨今、建設現場ではオリンピック需要からコロナ禍においても一貫して技能工、熟練工不足が叫ばれている。
従来の施工 においても熟練工不足の観点から徐々にではあるが機械化を取り入れた合理化、省力化に変化しつつある。
また日本をはじめ世界的にも脱炭素(カーボンニュートラル)社会の実現にむけたエネルギー政策など加速しており大きな変革期にき ている。
建設業においても建設機械や工法に採用される機械なども今後、低炭素にはじまり徐々に脱炭素への取り組みが予想される。
そんな変革期にある今、土間コンクリート工事においても機械化の取り組みによる省力化が加速している(写真1)。
例えば大面積施工を行う際は、1 打設 1000m²以上の現場となると 10名以上の技能工が動員され、物流やインフラ建設などのラッシュが 起こると大型物件はさらに技能工の不足が予測できる。関東、関西圏においても不足は免れないが、地方に目を 向けるとさらに技能工不足は深刻な状態である。地方で大型のコンクリート工事を行う際は関東関西圏から地方に出向く傾向にあり、関東関西圏で大型物件が続くと地方への熟練工の動員は難しくなる。
そこで今回は人手を減らしながらいつでもどこでも誰でも簡単に土間の均しを行える無人コンクリート均しロボット「リバイブロボ」を紹介し、当社が以前から手掛けているオール機械化工法 LCS工法(写真2)についてご提案したい。
2.リバイブロボとは
ボタン一つでコンクリートの締固めとトンボ均しが行える無人コンクリート均しロボットである(写真3)。
この一台でコンクリート中の気泡やエアを除去してコンクリートの密実性を向上させ、ひび割れ抑制効果を得ながら通常トンボ均しを行う要員を減らすことが可能となり、土間工全体の動員数を2割以上減員することが可能となる。例えば 1000m²あたり10名~12名かかる土間要員が7~8人で可能となり、トンボ均しによる擦り合わせ技能が不要なことから、難易度の高い土間均しを振動タンパーで担うことで、レベル精度を確保しつつ打設均しの技能 工不足を解消することができる。
ただしコンクリート床は、打設均しの際のレベル合わせが最も重要で、その良し悪しでレベル精度も大きく変わることからとてもシビアな工程と言える。そのため、リバイブロボ使用の際は走行に合わせてレベル確認が必要である(写真4)。
目安のレベル測定を行いながらリバイブロボ走行後も確認を行う必要がある。
3.なぜレベルが安定するのか?
従来のタンパー(写真5)に振動の加速度を計測すると、ほとんどの機種でボードの中央部と端部で振動数値が異なっている。締固めに必要とされる振動はクリアしているものの数値にばらつきがある。
リバイブロボはボード面全体で振動数を均一化したことで、従来タンパーの課題を解消した。均一化されたボードの振動によって床面の不陸を均一に修正しているのである。
ボード長さの2m以内であれば左右2~3mmのレベル誤差に対し、同一の振動を加えることでレベリング作用が働き平坦化される。つまりあらかじめレベル測定が行われていれば走行するだけで均一な床面を構築することが可能である。
リバイブロボは施工を行う際の移動も容易で外部や内部の上階においてもロングスパンやウインチでも楊重可能で、タンパー部分を外せば階段でも持ち運びは可能となる。S造、 RC造問わず使用可能である。またリバイブロボはリチウムイオンバッテリー搭載で脱エンジンにより、締め切った場所で も使用が可能で、内装を取り付けてからコンクリート工事を行う際や冷蔵倉庫などの仕上げコンクリートなどの打設時にも一酸化炭素中毒によるリスクもなく、安全に振動タンピングによる締固めが可能である。
4.LCS工法とは
次に以前から当社で行ってきた機械化工法であるLCS工法を説明する。
LCS工法とは、すべての作業工程をオール機械化することで、大面積施工による省力化と技能的負担を軽減し、従来工法以上の品質向上を目的とした工法であるが、開発の経緯は、もともと工場や倉庫コンクリート床の高品質施工として開発した工法であった。
LCS工法の特徴は、ミニスクリードによる初期振動均し(写真6)、タンパーによる再振動締め固め(写真7)、騎乗式トロウェルによる円盤掛け(写真8)をベースにしていることである。
これによってコンクリートの締め固めを段階的に行い、コンクリート下層から上層に溜まる気泡、エアを除去し、円盤掛けで表面加圧を行うことでコンクリート中から表層に至るまで高密度化し、表面の効果組織を緻密にすることによってコンクリート中から発生するひび割れを抑制する。
フォークリフトやAGV(自動搬送車)などが走行する工場や倉庫の大面積でかつ耐久性能が要求される場所においては、この重要工程を機械で定量的に行う必要があると考える。
次にLCS工法のレベル精度として、JISにある3メートル以内7㎜以下を達成している。イレギュラーを除き、±5㎜以下を達成する現場もある。
その精度向上の理由として、レーザースクリードの自動レベル調整による測定を行いながら定量的な均しが行えることにあり、床に必要なコンクリート量を定量的に配置することで必然的に精度があがるという要領である。
ただし、それだけではレベル精度は向上しない。コンクリートの均し工程は技能工の必要な重要工程であるが、それと同時に不陸調整の騎乗式円盤掛け(写真9)による工程と併用することでレベル精度が向上するのである。特に騎乗式による円盤掛けは不陸調整において重要であり、平坦性、平滑性を構築するうえでも重要工程といえる。
それらを怠るとレベル精度は安定しない。
実施工にて、表面加圧に騎乗式トロウェル円盤掛けを行った場合と、ハンドトロウェル円盤掛けを使った場合のレベル精度を、3Dスキャナーで確認すると、写真10のとおり、ヒートマップ上部のハンドトロウェル円盤掛けを行った箇所が斑点模様になっており、ヒートマップ下部の騎乗式トロウェル円盤掛けを行った箇所は全体床面に対してバラつきが明らかに少ないことから、平坦性が目視でも確認できる。よって、騎乗式円盤掛けとハンドトロウェルの円盤掛けではレベル精度、平坦性、平滑性への影響があることがわかる。
このようにLCS工法はレベル精度、耐久性能、美観を追求していることから今後の高密度化やレベル精度の必要なコンクリート計画においても推進したい工法である。
5.LCS工法×リバイブロボの併用
今回、そのLCS工法の重要工程といえる再振動締め固めにおいて、エンジン式タンパーから冒頭に説明したリバイブロボに替えて併用することで機械化の相乗効果としても期待が大きく、締め固め性能の向上や、省力化、低炭素化を図る目的もあることから、次に述べる試験結果をもとにレーザースクリードによる初期振動均し(写真11)、リバイブロボによる再振動締固め(写真12)、騎乗式トロウェルによる表面加圧(写真13)を、新しいLCS工法として採用を推進していく考えである。
6.どのような効果や品質がえられるか
LCS工法とリバイブロボの併用、またはリバイブロボのみの締め固め性能の根拠として得られる効果と品質について従来工法との比較を交え述べたい。
八潮市某ガレージコンクリー ト工事において、透気性試験を行い密実性の確認の実施および、取り出したコアより圧縮強度試験によるコンクリート強度の確認を行い、リバイブロボによる再 振動締固め効果を評価した。
①従来のバイブレーターのみで締固めを行い均し仕上げを行った箇所、
②バイブとリバイブロボを併用して締固めを行い均し仕上げを行った箇所、
③バイブ、レーザースクリード(初期振動)、リバイブロボ(再振動)を行い均し仕上げを行った箇所、
以上の 3 つの工法を100m²ずつ、同日、同一配合のコンクリートにてコンクリート打設仕上げを実施し、打設から 1 ヵ月後に行った透気性試験と圧縮強度試験をの結果は以下のようであった。
透気性試験(写真14)とは数値が小さいほど密実であることを示す密実性テストである。
従来工法で施工をした一般的なコンクリートに比べ、リバイブロボ再振動工法では約 1.5 倍、LCS工法では約 3.4 倍数値が向上し、緻密化されたことがわかる。
(図1)よって密実性が高まっていることが明らかになった。
現場にて取り出したコア(写真15・16)を用い、数値が大きいほどコンクリート強度が高いことを示す圧縮強度試験(写真17)において、従来工法で施工をした一般的なコンクリートに比べ、リバイブロボ再振動工法で施工をしたコンクリートの方が1.8 倍、LCS工法で施工をしたコンクリートの方が約 2.3 倍数値が向上し、強度が上がったことが分かった(図2)。
試験からもわかるように締め固めを段階的に行い、密実な締め固めと表層、表面を緻密にすることでコンクリート床は高品質化されるのである。それら工法をいつでも、どこでも、誰でも容易に施工できるようになれば技能工不足は軽減されると考える。
7.最後に
当社の工法開発はまだ始まったばかりであり、現在は省力化と品質向上をベースにした機械開発も独自で行っている。その第一歩が今回のリバイブロボである。これからさらに改良を加え、2号機、3号機と常にアップデートを繰り返し、より実用性の高いユーザビリティを追求することで広く展開できると考えている。また、これら開発によって技術を自社で独占せず、リースなどによって全国各地で展開できるものとしていく考えであり、日本の現場からイノベーションを起こし、合理化、高品質化しつつ、技能工不足解消の一助となる取り組みを行う考えである。
機械化や自動化、ロボテクス化といった工法がすべての工事を担えることは考えにくいが、日本のハンドメイドで培ってきた技能を活かしつつ仕事と作業の本質を見極め、作業の部分は自動化やロボテクス化を推進していくことが技能工不足の解消と合理化、高品質化の具体策と考えている。
またこのような合理化を推進するために機械化や自動化を積極的に取り入れる環境も見直していかなければ、施工店から積極的な提案があっても現場で受け入れてもらえないことも多々あることから、コン クリート施工としての技術も世界的に後れを取る要因になりかねない。
我われ施工者もテスト施工(写真18)を随時行い、お施主様をはじめ、 元請け各社にも積極的に推進していく所存である。