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1.はじめに

 昨今、デジタル化をはじめ、カーボンニュートラルやSDGsに沿ったものづくりがお施主様をはじめ、ゼネコンなどの企業も活発に取り組まれており、コンクリート製品においてもCO2排出低減によるセメントを使用するなど、環境に配慮した製品が活用されつつある。在来のコンクリート床施工の現場においても、床を長寿命化することによる持続可能な床施工が求められている。特に工場や倉庫など、製造や保管といった用途においては今後自動化やデジタル化を図る前提で計画されることから(写真1)、床に要求される機能は新築、改修いずれにおいても以前とは大きく変化している。

写真1 自動化およびデジタル化が進む工場や倉庫

 今後の工場、倉庫に必須となるコンクリート床を持続可能な床仕上げとして完成させるうえで不可欠なのが、床のひび割れ抑制と平坦性および耐久性能である(写真2)。そこで本稿では、在来の大面積コンクリート床において持続可能な床づくりをどのような施上法によって仕上げるのか?または提案するのか?を施工者の観点から記した。また新設コンクリートにおける磨き仕上げによって耐久性アップとクリーンな印象の得られる光沢仕上げ(写真3)について記したので参考になれば幸いである。

写真2  ひび割れ抑制、平坦性、耐久囲が求められる
写真3  耐久性および美観の向上を図る床の光沢仕上げ

2.現代施工における懸念点

 物流倉庫などの大面積コンクリート床を施工するにあたり、ひび割れ抑制は面積の大小を問わず検討されるが、コンクリート打設時においてひび割れ抑制に最も効果が高いとされている工程が「締め固め」作業である。
 JASS5では、打設時に行う締め固めとして床面の生コンに対しバイプレーターを60cm以内5~15秒の充填を行うとされているが(写真4)、ほとんどの現場で一回の充填を5秒以上行うことはないと考えられる。理由は打設スピードに対し十分な締め固め作業が追いついていないことにある。1000㎡の打設を行う場合、200立米ほどの生コンを使用するが、コンクリート打設時間の制限や、近隣に配應した時間的な制約もあることから、時問あたり40立米以上打設しなければならない。しかしながらほとんどの現場では締め固めによるバイプレーターは40~45径のサイズで1打設あたり2本の使用で作業を行うのが一般的とされている。その場合、仮にJASS5の通り5秒以上の締め固めを行うと時間あたり40立米以上の打設は不可能となり、明らかに締め固め不足が生じていると言わざるを得ない。

写真4 バイブレーターによる充填

3.締め固めロボットを活用したひび割れ抑制

 そこで締め固め作業の本来の目的を達成し、ひび割れ抑制がすべての現場で担えるよう開発されたのが自動コンクリート均しロボット「リバイブロボ」である(写真5)。リバイブロボはバイブレーターと併用して締め固め不足を補うだけでなく、床面全体に振動が行き渡るため、バイブレーターの点(深さ方向)の振動とリバイブロボのボードによる面の振動で、床面全体に行き渡る密実な締め固めを確実に行うことが可能となった。

写真5 自動コンクリート均しロボット「リバイブロボ」

 このロボットの開発目的は上記に挙げた通り、不十分な締め固めをJASS5の基準値と同等以上に密実な締め固めを行うためであり、昨今の時間規制による大面積コンクリート打設のスピードに合致するよう実用レベルで開発したことにある。また昨今の技能工の不足を考慮し、後追いバイブを行う要員および土間工のトンボ均し作業を簡略化させ、操作性をリモコン操作のみで行い(写真6)、技能の安定と省力化を同時に達成させた。リバイブロボを使用し、2割の省力化を実現しつつ品質向上につなげられることから、この1年間において20万㎡の実績をあげている(写真7)。さらに今後の高品質化と効率化の両面を担えることから建物の長寿命化を省力化しながら達成するためのひび割れ抑制工法として推進していきたいと考えている。

写真6 リモコン操作により操縦が可能
写真7 リバイブロボによる施工実績は1年間で20万㎡以上を達成

4.平坦性を確保する騎乗式トロウェル円盤の重要性

 上記に挙げた自動均しロボットリバイブロボに加え、コンクリート打設は打設して完了ではなく、床表面に金鏝仕上げを施してようやく完了となる。コンクリート均しを良好に終えても金鏝仕上げの工程によって不陸が生じることもあることから、とても重要な工程と言える。その仕上げ工程の中でも精度の良し悪しに直接影響する工程は騎乗式トロウェルによる円盤掛け不陸修正作業である(写真8)。物流倉庫などでは自動化によるAGV(自動搬送車)の導入も活発になっていることもあり、今後は考慮して計画することが望ましい。

写真8 騎乗式トロウェルにて表面加圧をかけながら不陸修正を行う

 特に大面積コンクリート床の精度は点のレベル精度も重要であるが、微細な段差や不陸のない平坦、平滑な床であることが昨今の顧客の大きな要求性能とされることが多い(写真9)。そこで重要な工程とされる騎乗式トロウェルは昨今、表面の剥離現象が生じるという理由から使用されなくなっているが、剥離現象はコンクリートの材質や配合または施工環境に大きく影響されるので、材料や施工環境の改善を図るとともに施工前のモックアップを作成し施工を行えばリスクは低減される。
 騎乗式トロウェルの利点は円盤の面全体で床を擦り合わせ、乾燥により不均一に生じた床表面の不陸を修正し、加圧によって硬化組織を緻密にすることにある。そのため仕上げの直前ではなく網ゲタで乗れる頃合い(表面が半渇きの状態)に騎乗式円盤掛けによる不陸修正を行う必要がある。これを行うと仕上げ前のハンドトロウェルが跳ねることなく滑らかに進むことから(写真10)、平坦な床になっていることが仕上げ前から実感できるのである。大面積コンクリート床は照明をつけると床しか見えないため、目視においても不陸が確認でき、いかに平坦でかつ平滑であるかが問われる。平坦性、平滑性の確保は極めて重要になるのである。

写真9 照明をつけても平坦性が際立つ床
写真10 ハンドトロウェルによる仕上げ前に平坦性を確保する

5.新設コンクリート床仕上げをさらに持続可能な床仕様にするには?

 コンクリート床仕上げは素地として使用する場合、 塗り床や塗装およびシート張りなど、なんらかの保護を行い、欠損や中性化の防止を施す必要がある。そこで「塗らない、張らない」、持続可能な床仕上げとして実施しているのが研磨工法による磨きと浸透性表面強化剤との併用である。表面硬度の強化と耐久性向上を得るための保護材としての役割を担うだけでなく、防塵効果やメンテナンス性に優れた床とするため(写真11)長期的なコスト面においてもとても良好と言える。

写真11 磨き上げた床はメンテナンスも容易となる

6.研磨工法による半永久的な床の構築と美観を追求する仕上がり

 当社が実際に行った外資系の大型のショッピングモールを例に(写真12)、持続可能な床仕上げと美観について施工側の観点から申し述べる。
 美観を作るうえでは光沢度を上げるための研磨を施すのみであるが、重要なのは、一度施工すると基本的には「塗らない、張らない」を目的としたうえで、さらに半永久的な床仕上げとするため脆弱なレイタンス層を一度研磨し、粗面にしてから浸透性表面強化剤を塗布し、床全体に浸透させてからレジンボンド等で光沢をつけることで強固な床が構築される(写真13・14)。またこの研磨工法は既設コンクリートにおいても施工可能で、既設床の塗料や塗り床を剥がし、大型研磨機による研削によって不陸を修正してから上記の鏡面仕上げを施す工法を採用する工場や倉庫も増えている。鏡面仕上げによるコンクリート床仕上げは耐久性、メンテナンス性、美観等が優れており、ショッピングモールに限らず物流倉庫や工場においても今後益々需要が増加するものと考えられる(写真15)。

写真12 コンクリート鏡面仕上げ(ポリッシュコンクリート)施工後床
写真13 レジンボンドを装着した騎乗式トロウェルによる艶出し
写真14 押し研磨機による光沢付け
写真15 需要が高まる物流倉庫の光沢仕上げ

7.まとめ

 建物の長寿命化を図るうえで大面積によるコンクリート床仕上げの施工法をコンクリート打設から仕上げまで施し、さらに半永久的な床仕上げとする研磨工法までを紹介した。
 当社は今後も一つ一つの作業工程を研鑽し、より良い工法を開発し、ロボットや世界中の先端機械を駆使して建物の長寿命化を実現していく所存である。現在、お施主さまの要求性能は時代の変化とともに高度になっており、床の使用方法も変化していると言える。したがって我々施工者は今の技術が1番良いと決めつけるのではなく、常に時代に合った施工を開発し(写真16)、変化していくことを忘れてはならないと実感している。よって技術の研鑽に終わりはない。これからも顧客と向き合い、現場と向き合い修練する日々である。

写真16 リバイブロボ次号機のテスト走行