多様化する倉庫床をどう計画するか?
まずは、写真1・2を参照いただきたい。 写真1はコンクリートに光沢をつけた倉庫床、写真2はマット(非光沢)な質感で仕上げた倉庫床である。
倉庫の用途によって仕上げ方法が異なるが、光沢をつける利点としては圧倒的な美観、人に与える明るい印象、清潔感であり、メンテナンス性も優れている点などがあげられる。一方、マットな質感はどのような用途において採用されるのか。それはさらに優れた防滑性を確保したい場合や、近年増加しているAGV(自動搬送車)導入によるスリップ防止のため、表面を微細な粗面仕上げにしてマットな質感で仕上げるケースも増えている。
光沢床仕上げは大きく分けて、コンクリート打設時に行う鏡面仕上げ「モスキート」(写真3)と、引渡し前に研磨する鏡面仕上げ「ポリッシュ湿式工法」(写真4)がある。
マットな質感の非光沢床も大きく分けて、打設時に行う場合と、引渡し前に行う場合とがある。当社が提案・推奨しているのは、表面を鏡面仕上げにした後、光沢・非光沢の仕上げを施工する方法である。コンクリート打設の際に機械ゴテ押えの加圧による表面の緻密化をすることで、ひび割れ抑制や耐久性能においても大きく影響するからである。どちらの仕上げにおいても、鏡面仕上げは物流施設のコンクリート素地面において必須と言える。
強固な倉庫床は緻密化された表面・表層を作ることが重要
光沢をつけない床だからと表面を手押えやフレスノ程度(写真5)で仕上げると、表面の硬化組織は緻密になっておらず微細な空隙が多く発生し、鏡面仕上げと比べてグレードとしてはかなり劣ってしまう。
強固な倉庫床をつくるという観点でみると、やはり緻密化された鏡面仕上げに一度仕上げてからマットな質感(非光沢)にすることが望ましい。浸透性表面強化剤の浸透を手押えと鏡面仕上げとで比べると、手押えの浸透量が既定の2倍ほどに増えるケースもあった。鏡面仕上げは硬化組織が緻密になっているため浸透量が既定の量で収まり、経済的にも優れていることがわかる。
ひび割れ対策の重要性
竣工後、数年で0.5㎜以上のひび割れが発生するケースも見受けられるが、これは打設時における締固めのタイミングと回数が大きく影響している(写真6)。
通常の締固めは、棒型バイブレーターを使用する際にトンボ均しと並行して行うタンピング作業が一般的であるが、実はタンピング後のブリーディングにより水ミチが形成されている。従来ではこの水ミチを除去しないまま金鏝仕上げを行っていたため、水ミチや空隙が残ったままとなり、日々摩耗や衝撃が加わることで竣工後数年でひび割れが多く発生してきた。そこで当社が推奨しているのが再振動締固めの実施であり、その再振動を与えるタイミングも重視していただきたい。
当社の推奨する再振動のタイミングは、ブリーディングの形成時と定義している。定義の詳細は誌面の都合上、割愛させていただくが、ブリーディング時の水ミチが形成されてから再振動を行うことで、写真7のような水ミチや気泡が除去される。
この工程を入れるか入れないかでその後の耐久性能は大きく異なってくる。タンピングを行えば、ひび割れは抑制されるとの認識も当然間違いではないが、ビルやマンションに比べて衝撃や摩耗の激しい物流施設の床だからこそ、さらに締固めを段階的に行い、より密実かつ緻密に仕上げることがとても重要である。これはカラーコンクリートや塗床を計画する場合も同様で、ひび割れの根本原因を除去することが強い物流施設をつくるうえでとても重要なポイントと言える。
締固めと表面加圧の手順
①レーザースクリードによる初期振動締固め(写真8)
②再振動による再振動締固め(写真9)
③騎乗式円盤で行う表面加圧(写真10)
この締固めと表面加圧を段階的に行い、さらに最終仕上げは軽量化された機械で緻密に仕上げていく。
このように当社では、締固めと表面加圧を段階的に分けて行い、コンクリート中の締固めと表面の緻密化を行うことを推奨している。また、最終仕上げに関しては現地で供給される材料の相性に合わせた仕上げを行うため、事前にモックアップ施工をする場合もある。本施工を行う前の提案となるため、詳しくは問合せいただきたい。
物流施設床に欠かせない機械化と定量化
物流施設は打設面積が大きく、1日あたり800~1,500㎡ほど打設が続くことが多く、工期工程や近年の気候変動による台風や雨天の関係上、ポンプの台数を増やして2,000㎡以上の打設面積を仕上げる場合も希にある。その分、職人の動員数も大きくなり、技能の良し悪しでレベル精度や締固めの精度もバラつきが生じるというリスクも多々ある。例えば「こちらの1,000㎡は精度が良いが、もう一方の1,000㎡は技能工が足りなかったため精度が落ちた」となれば倉庫全体のレベル精度や品質は均一とは言えず、大面積のコンクリート打設が多い物流施設において大きな課題とも言える。
そこで当社では、均しから仕上げまでの工程をすべて機械化する、オール機械化工法に着手した。品質的な締固めや緻密化を図るうえでもオール機械化工法は役割を担い、技能の安定化にもつながる。誰が均しても同じレベル精度を実現するということは、今後の倉庫床を打設するうえで、最も必要な取り組みではないだろうか。
倉庫全体のレベル精度やコンクリートの密実性を安定させることが、技能不足や品質低下のリスクを解消し、大面積で強固な床仕上げを実現できると確信している。
散水シート養生は打設当日に行う
当社で携わる現場では、床コンクリートの散水シート養生の時期は打設当日に行うことを提案している。通常、養生は打設の翌日に行われることが多いが、コンクリート表面は打設当日から翌日にかけて著しく蒸発し乾燥していく。水和反応で必要とされる水分が蒸発すると乾燥収縮やプラスティックひび割れなどが発生する。また物流施設は施工時の環境として風の強い場所で施工する場合も多いことから、散水養生においても計画段階で当日養生の実施を推奨する。
最後に
近年、多様化する物流施設において、その配送方法も大きく変化している。従来のフォークリフト作業による配送に加えて自動ロボットによる無人化、またはAGV対応(自動搬送車)倉庫の計画も増えており、コンクリート床仕上げにおいてもその用途に応じた床仕上げを行う必要があると考えられる。
当社は、土間コンクリート床仕上げに始まり、左官工事、養生や表面強化剤、特殊洗浄機を使った美装クリーニング(写真11)に至るまで一貫して提供する。顧客およびエンドユーザーにとって価値ある物流施設床をつくり出すことが私どもの使命と考えている。
今回記した内容は、今後の物流施設コンクリート仕上げ計画を行ううえで、様々な用途の倉庫においても基本的かつ重要なポイントを抜粋した。今後の計画や施工法の採用をご検討の方は、下記までご連絡いただきたい。